4期目を迎えるにあたって
「イベント」から「文化」へ
――死を起点にした社会デザイン
一般社団法人デスフェス 共同代表 市川望美・小野梨奈
2026年8月1日
一般社団法人デスフェスは、「死をもっと自由に語れる社会」を目指し、年に一度の「Deathフェス」をはじめ、対話、教育、調査研究、事業共創などに取り組む団体です。
私たちが行っているのは、死について触れるイベントだけではありません。死をめぐる社会の習慣、関係性、選択肢、制度のあり方を問い直し、新しい文化を育てること。私たちは、その営みを「死を起点にした社会デザイン」と捉えています。
このたび、私たちは4期目を迎えます。新しい期の始まりに、これまでの歩みを振り返りながら、これから育てていきたい社会と文化についてお伝えします。
3年目に見えた、社会変化の兆し
2026年4月に開催した「Deathフェス2026」には、オンラインを含め5,040人の方にご来場いただきました。90のプログラムに103名が登壇し、46の事業者が出展。27件のメディア取材にもつながり、来場者5,000人、メディア取材20件という目標を達成することができました。
会場では、「遺影写真を撮りに来たんです。ヒカリエは初めてです」と話す90代の男性や、「夫婦で入棺体験をしに来ました」と話す80代の女性にも出会いました。
年齢も背景もまったく異なる人たちが、それぞれの理由で“死”に向き合いに来る。その光景に、私たちは「死をもっと自由に語れる社会」が、ほんの少し近づいてきているのかもしれないという希望を感じました。
1、2年目は、身近な方々の応援に支えられていた部分が大きかったと思います。しかし3年目は、私たちが直接知らない方々の来場や、「来年は出展したい」という事業者の声が増えました。応援の気持ちを託していただく投げ銭チケットも、約150名の方にご購入いただきました。
Deathフェスが少しずつ私たちの手を離れ、それぞれの人の問いや実践として、社会へひらかれ始めている。その手応えを感じた一年でもありました。
「死を起点にした社会デザイン」とは
私たちが変えたいのは、死のネガティブなイメージや、死を遠ざけてしまう姿勢だけではありません。
死が医療、介護、葬送などの専門領域や、人生の終盤だけの問題に閉じ込められ、当事者になるまで考えたり語ったりする機会がほとんどないこと。死に関する情報や選択肢が分断され、自分がどうありたいのかを考える場や、異なる死生観に出会う機会が少ないこと。
Deathフェスは、死について触れるイベントであるだけでなく、こうした死をめぐる社会の習慣、関係性、選択肢、制度のあり方を問い直す、実験的な場でもあります。
異なる世代や立場の人たちが出会い、それぞれの知恵や経験を持ち寄る。これまで語れなかったことを語り、新しい体験や選択肢を生み出し、日常や社会の仕組みへつないでいく。
私たちは、その一連の営みを「死を起点にした社会デザイン」と呼んでいます。
私たちが「文化」と呼びたいもの
4期目に掲げるテーマは、「イベント」から「文化」へ。
ここでいう「文化」とは、Deathフェスというイベント自体が有名になることでも、同じ形の催しが各地に増えることでもありません。
死を特別な場所に閉じ込めず、日常の中で考え、語ることができること。一人ひとりが自分なりの死生観を持ち、異なる価値観と共存できること。必要なときには、自分の願いや大切にしたいことを誰かに伝えられること。
それが、特別なことではなく、社会の当たり前になっていくことを、私たちは「文化」と呼びたいと思います。
年に一度の「特異点」から、日常と社会へ
4期目も、渋谷で開催するDeathフェスを、多様な人や問いが集まり、変化の熱量が一気に高まる「特異点」として大切にしていきます。
同時に、年に一度のイベントで生まれた問いや実践を、日常と社会へ持ち帰る取り組みを進めます。
全国各地でのポップアップや、ニューヨークをはじめとする海外での展開を通して、それぞれの土地にある死生観と出会い、死について考え、語る入口をひらくこと。
死を知識として学ぶだけでなく、自分自身の生き方や社会との関係から捉え直す「Deathエデュケーション」や、対話のためのプログラム、ツールを、学校、職場、地域、家庭へ届けること。
そして、Deathフェスや、死を起点とした共創の場「Deathラボ」に集まった声や問いを、調査研究、事業共創、政策や制度への提言につなげること。
イベントで生まれた熱を、その場限りのものにしない。問いを持ち帰り、別の場所で語り直し、新しい実践や選択肢へ変えていく。4期目は、その循環をより意識してつくっていきます。
世界に先駆けて多死社会を歩む日本から、私たちはどのような死生観と、新しい社会の選択肢を提示できるのか。
2026年11月にはニューヨークで、アートを通して日本の死生観を届けるとともに、異なる文化との対話から、私たち自身の死の捉え方も問い直す挑戦が始まります。
運営に関わる人のウェルビーイングを大切にする持続可能な組織へ
一方で、活動が広がったからこそ、持続可能な運営への転換も必要です。
一般社団法人デスフェスの活動はこれまで、ビジョンに共感するプロボノメンバーの力に大きく支えられてきました。しかし、志や善意に過度に依存するだけでは、活動を長く続けていくことはできません。
私たちは、Deathフェスを10年続けると決めています。
だからこそ、活動に関わる人の仕事や家庭、暮らし、ウェルビーイングも大切にしながら、持続できる組織と仕組みをつくっていきます。
誰かの犠牲によってウェルビーイングをつくらないことも、私たちが実践したい社会デザインの一部です。
死を起点に、社会の未来をひらく
4期目は、デスフェスのビジョンや世界観に共感してくださる皆さまとの「共創」に、これまで以上に力を入れます。
死を起点に、社会の未来をひらく。
軸はぶらさず、方法は軽やかに。
選べないことの多い生と死の中でも、一人ひとりが自分なりに考え、語り、選ぼうとする力を持ち続けられるように。
皆さまとともに、新しい文化を育てていけたらうれしいです。
4期目の一般社団法人デスフェスも、どうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人デスフェス
共同代表 市川望美・小野梨奈
2026年8月1日

